日傘とゲリラ豪雨
いい年越えて僕は運転免許も持ってない
なのでバスを利用して45分の距離を通過して僕は会社にいつも向かう
1日に出ているバスの本数も少ないので、毎朝遅刻しないかどうか不安になりながら通勤している
仕事柄、残業をすることが多いのだけどここ一週間はわりと暇で定時に上がることが多くなっていた
昨日もちょうど定時に帰れる日だった
帰りのバスまで時間があるから、会社の喫煙所で20分ぐらいタバコをふかしながら時間をつぶしていた
バスが到着する時間が近くなったので、タバコの火を早々と消し、職場の上司と同僚に別れを告げてその場を去った
バス停まで向かうとバス停には先客が一人いた
遠目で見ると腰まで長い髪女の子だった
昔働いてた職場にいた女性に似ている子だった
多分、年齢は19〜22歳ぐらいだと思う
似てるなと思いながらも、横目にちらりと見たきりで、あとは無関心のふりをするためにiPhoneを取り出してYouTubeなんかを見ていた
そんな自意識過剰な不毛な防衛行為をしていた2分後ぐらいに突然の大雨が降ってきた
僕がこの世の中で2番目に嫌いなものは雨である
最悪だなと思いながら、周りに雨を凌げそうな建物がないものかとキョロキョロと周りを見渡して見たが、何も見当たらなかった
どうせ家に帰るだけなのだからこの際濡れてしまおうと腹をくくったのだけど
隣から突然声をかけられた
「良かったら日傘ですけど、一緒にどうですか?」
と先程まで僕が勝手に無関心を決め込んだ女の子が話しかけてきた
社交性の無さに定評のある僕は狼狽えながらも大丈夫ですと一言いうことが関の山だった
「いや濡れてるの見てるのは忍びないのでどうぞ!」
と寄ってきて日傘の中に入れてくれた
聖人君子か天使の生まれ変わりかなと思った
あとこれがカントの曰く、善という行いなのかとも思った
これはきっと親御さんの育て方がとても良かったのだろう
親の顔が逆の意味で見たくなった
傘を貸してくれた女の子に傘を持たせるのは、さすがに男がすたると思ったので、紳士のふりをして傘を持ってあげた
他人と他人の不思議な相合傘の完成である
他人と相合傘なんか経験したことがなかったのですごく変な感じになった
僕は沈黙は危険だなと思い、とっさに
「今日の天気予報は、雨でしたっけ?」
などともはや雨傘を持ってない彼女に聞いても意味のない質問でお茶を濁すことしかできなかった
そんなどうでもいいことを二言三言交わしてる間に雨が通り過ぎてしまった
雨が止んだので僕は彼女にありがとうございますと一言礼をいい、日傘の中から出て会釈を軽くした
僕が乗るバスが来たのでまた会釈をして、僕はバスに乗った
バスに揺られながら、月が綺麗に見えてなんか今日は良い日だなと思った
僕がもう少し若ければ、危うく恋に落ちかねないシチュエーションの出来事だったなとも思った日でもあった